《ヨハネ受難曲》BWV245 第IV稿 CD発売のお知らせ
2022年3月28日に行われた明治学院バッハ・アカデミー《ヨハネ受難曲》BWV245 第IV稿(1749)の演奏会がライブCDになりました。バッハ没後250年を記念して2000年に設立された明治学院バッハ・アカデミーは、2020年に創立20周年を迎えました。節目の演奏会の曲目にバッハの大作《ヨハネ受難曲》を選び、バッハの生前に何度も改訂された版の中から晩年の最終上演稿となる第IV稿を用いて演奏しました。
この演奏会は本来は2021年3月に開催予定でしたが、新型コロナ蔓延によりやむなく1年延期いたしました。その後も何度も練習を中断せざるを得なくなる等厳しい状況が続きましたが、感染防止策を徹底しながら何とか実施にこぎ着けました。苦しい時こそバッハを歌いたいという出演者・関係者の強い思いで実現した《ヨハネ受難曲》の感動の演奏を、この機会に是非お求めください。
バッハ・カンタータ演奏会 ライブCD発売のお知らせ
2018年6月2日(第1回)、2019年8月31日(第2回)に行われた明治学院バッハ・アカデミー「バッハ・カンタータ演奏会」がCDになりました。2回の演奏会で取り上げたカンタータは、代表・芸術監督の樋口隆一先生が、ドイツの世界的なプロジェクトである『新バッハ全集』の第1編第34巻 "Kirchenkantaten verschiedener Bestimmung", Bärenreiter, Kassel 1983 のために校訂した全7曲です。2018年に3曲を、2019年に残りの4曲を演奏しました。
どの作品も、正確な用途や作曲年代は不明ながら、特別な儀式や祝典のために入念に準備されたものと想定されます。ある曲は静かに、また別の曲は歓喜を爆発させて、神を讃え、感謝し、信仰を告白します。カンタータはミサ曲や受難曲に比べて演奏の機会はそれほど多くなく多少知名度は落ちますが、いずれも劣らぬ名曲・力作揃いで、まさに通のための選曲です。
演奏会当日の曲目解説にさらに最新の学説を追記したブックレットも付属します。この機会に是非お求めください。
カンタータ傑作集 II
カンタータ傑作集 I
ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」演奏会 ライブCD発売のお知らせ
2018年10月9日に行われた明治学院バッハ・アカデミーの演奏会がCDになりました。ベートーヴェン自身が「最も偉大な作品」と呼んだ渾身の傑作であり、作曲当時はきわめて革新的で前衛ともいえる難曲ですが、その後の楽器の改良などによりチャレンジの度合いは薄れてきていました。オリジナル楽器を使うことにより、ベートヴェンの持つ過激なまでの革新性を顕わにして、高みへの挑戦を再び認識させてくれます。「苦悩を突き抜けて歓喜に至る」ベートーヴェンの本質に迫る1枚。開設30年を迎えリニューアルされたサントリーホールでのライブ録音です。
(レコード芸術2018年10月号 準推薦)
フォーレ「レクイエム」演奏会 ライブCD発売のお知らせ
明治学院バッハ・アカデミーの演奏会が、またライヴ録音CDとして発売されました。サントリーホールで行われた演奏会(2016年6月21日)は、レクイエムの他にプーランクの《オルガン、ティンパニと弦楽合奏のための協奏曲》、モーツァルト《ハフナー交響曲》《ミサ曲変ロ長調》、フランクの《コラール第3番》という、さながらパリの大聖堂での演奏会を思わせる意欲的なプログラムが組まれました。当日の演奏も、ソリストの名唱やオルガン・オーケストラの名演に支えられ大変なご好評をいただきました。
このCDは、当日の録音からフォーレの《レクイエム》を選んで発売いたしました。大合唱・大オーケストラの演奏とはひと味違った、フランスの宗教音楽の伝統に則った繊細で引き締まった演奏をぜひお楽しみください。
サントリーホール30周年記念特別公演 ライブCD発売のお知らせ
この度、molto fineレーベルより《マタイ受難曲》ライヴ録音CDを発売することとなりました。 2002年に演奏された初期稿(1727/1729)での日本初演のCDは、初期稿盤としては世界初のCD化として話題を呼びましたが、今回は後期稿 (1736年)による2016年3月20日のサントリーホール 30周年記念特別公演でのライヴ盤(3枚組)です。 福音史家、テノールのジョン・エルウィス、イエス役のバスに河野克典を迎えるなどソリスト陣の充実ぶりと、明治学院バッハ・アカデミー合唱団・合奏団(古楽器使用)の近年の質的向上は特筆すべきものがあります。 古楽研究の成果も踏まえつつ、《マタイ受難曲》に新たな境地を切り拓いており、なにより、数ある《マタイ受難曲》の中にあって、自然に滔々と流れるバッハの世界をこの機会にご体感ください。
大原さんのサイト→大原哲夫編集室ホームページ
樋口隆一の「マタイ受難曲」を聴く
大原哲夫
昨年亡くなった友人の画家・堀越千秋はカンテの歌い手としてもスペインで絶賛されるほどであったが、彼のアトリエにはマタイのカセットテープがあった。創作に行き詰まると彼は安物のラジカセでマタイを聴いた。武満徹は作曲にとりかかる時、必ずマタイのコラールの一節をピアノで弾いてから譜面に向かった。かようにバッハのマタイ受難曲は特別な曲である。
創作とは無から有を生むことである。それは己と向かい合うこと、己自身を問い直すことでもある。自然や神、大いなるものと対話することにもなる。
夕日が海に落ちてくるあの素晴らしい光景。松林にざわめく風の音。今まで出会った数多くの風景、生きて今まで知り合った多くの人々。そして、ここにいる私は一体何者のか。広い宇宙に、今ここに存在している私は一体誰なのか。
昨年、バッハ・コレギウムの鈴木雅明指揮のマタイ、続けてサントリーホールで樋口隆一指揮のマタイを聴いた。近年のマタイの演奏はドラマツルギーとしてのキリストの受難を劇的に演奏するものが多い。バッハ・コレギウムのマタイの演奏は、聴衆もまたキリストとともにいるイエスの弟子の1人となってしまうほど迫真の表現である。それを悪いとは言わぬが、目の前で演じられる劇的な演奏が素晴らしければ素晴らしいほど、目も耳も舞台に釘付けとなり、マタイを聴きながら、自らを省みる機会が失われるという皮肉な結果になる。
樋口隆一の指揮するマタイはその対極にあった。久しぶりに心が穏やかに、大いなるもの前の小さな己の存在を気づかせてくれる心休まる演奏だった。特にコラールが素晴らしい。素晴らしいと言うのは、これは技術的にうまいと言うのではない。バッハの無伴奏チェロ組曲を終生の友としたチェリスト青木十良はアンサンブルとは一致することではなく、調和することであると言ったが、ここで演奏されたコラールは、アマチュアの合唱団であるから、当然、技術的にはうまくはないのかもしれないが、いたずらに完璧さを求めたものではなく、合唱団のそれぞれの思いが見事にブレンドされ、心地よい調和をたもっていた。 心のこもった歌声だった。エヴァンゲリストは70歳を迎えており、そのことで最盛期の声が失われたなど批評家は言うが、そんなことはない。見事な味を出している。声楽家は最盛期の、声量が豊かな時がいいと言うならば、円熟した歌舞伎役者や古今亭志ん生の落語を若い時のほうがいうのと同じである。音楽にも味が大事なのである。若ければいい、声が出ればいいと言うものではない。
樋口隆一の指揮も見逃せない。彼は音楽を支配しない。音楽に身を任せる。 合唱団のメンバーは「樋口先生の指揮はよく見ていないと、どこから始まるかわからない」と愛すべき悪口を言うが、フルトヴェングラーの棒だってよく見てないとどこで始まるかわからなかったそうだ。近衛秀麿も同様だったようで、だから近衛秀麿は「ふると面食らう」と言われた。
そういう意味では樋口隆一の指揮はフルトヴェングラーや近衛秀麿の系列に連なる。音楽を楽譜の縦の線に合わせるのではなく、行く川の流れが常に横にたゆたうように、指揮者は音の川の流れに身を任せる。舞台で見ているとよくわかるのだが、縦に刻むのではない。指揮者樋口隆一の体は常に左右にたゆたう。少しも音楽の邪魔をしない。聴衆はマタイと言う大きな川の流れの両岸に展開する様々な風景、様々な出来事の中に身を置き、省みて己を振り返る、そんな機会を与えてくれる演奏だった。
ファイン・N&Fの 西脇義訓、福井末憲の二人は、サントリーホールで演奏された、この樋口隆一指揮のマタイ受難曲をライブ録音した。そのCDが出来上がり、わが家に送られてきたのだが、実に自然に当日の様子を録音している。いたずらな誇張はない。空間に広がる合唱団のメンバー一人ひとりの思いや、ソプラノ、アルト、テノール、バスの独唱者たちの、真摯な音楽に対する思いまでもマイクを通して拾い上げ、オーケストラのメンバーたちの決して完璧ではないが実に心地の良い響きを捉えている。
私はマタイ受難曲の新譜が出たというと昔から必ずLPレコードのセットを買っていた。十数組はあるだろうか。私のマタイコレクションの中でもこれは折に触れて聴きたくなるマタイである。
ゴーギャンは言った。「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」と。
(2017.1.22記)
明治学院バッハ・アカデミーのCD
明治学院サービス、タワーレコード、HMVのサイトからお求めください。(マタイ受難曲後期稿、ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」、フォーレ「レクイエム」、バッハ・カンタータ傑作集は、明治学院サービスのお取り扱いはありません)
MF22317/18 |
|
MF22316 |
|
OVCL-00617 |
|
MF22315 |
|
MF22312 |
|
BAMG-0001/3 |
|
BAMG-0004/5 |
|
BAMG-0006 |
|
BAMG-0007/8 |
|
BAMG-0009 |
|
BAMG-0010 |
|
BAMG-0011 |
演奏会評など
(YouTubeビデオ[字幕付])
日本におけるグルリットの受容(ドイツ語)